ハンブン東京 詳細レビュー①

ハンブン東京の物語を追いつつ、感想を書いてみる。



まず最初に流れる音楽が可愛い。チャイムみたい*1な?
全体的に音楽は優しい、可愛らしい曲が多い。すごくそれが作品にマッチしてるんだ。


主人公アサクラテッペイ(吉沢悠)の一人語りと、それを見つめるヒロインエビハラユキ(眞野裕子)から物語は始まる。
正直、冒頭のこのシーンが無いと、この二人が主軸なんだってことを忘れそうになる。登場人物それぞれに別の物語が割り振られてて、その割り振られた物語の比率にそう差が無いからだ。脇役かと思われた人物まで、しっかり何かしらの事件が起こったりする。
そして何より、ヒロミチ(大竹一樹)と、サオリ(近内仁子)の物語の方に余計に感情移入しちゃって、そっちの方が感動の度合いが大きかったというのもある。ただ、テッペイとユキの話にもすごく共感できた。


場面変わって電車内。携帯をいじるソノベカナ(益子梨恵)を見つめるヒロミチ。どうやら一目惚れしたらしい。
電車が原宿駅に止まり、ジュン(日村勇紀)、アスカ(設楽統)、ミサキ(和希沙也)の3人が騒がしく乗り込んでくる。
お客さん初笑いシーン(笑)出てきた瞬間からお客さんの心をつかんだこの3人は本当においしいなぁ。
アスカ「原宿無くない?」
ジュン「もう俺達の来るところじゃないっつーかさー」
と、いかにも知ったかぶったこと言ってるんだけど、この、ふかわを連想させるような知ったかぶりっぷりと、「はいはい、お姫様の言うとおり」みたいな嘘くさいセリフの言い回しと、嘘くさい笑いがすごく面白い。
カナもヒロミチもウザそーにしてるし。実際居たら相当ウザいだろーな。
『現代美術と神々の怒り展覧会』の中吊りを見つけたらしい3人はそちらの方へと向かい、カナとヒロミチの目が合う。
しかし、わざとらしく目を逸らすヒロミチ。ここで、ヒロミチ一人妄想ショーへ突入。
ヒロミチ「向こうも意識してんのかな?いや、どうせうす汚ねーサラリーマンが!って思ってんだろ。じゃあヤバい!次目ぇ合ったら大声出されちゃうな!そしたら周りに居るうす汚ねーサラリーマンが俺を捕まえに来て、次の駅に着いたらうす汚ねー鉄道警察が来て、俺はあばれるからホームと電車の間に落ちちゃう!ザーッ!
で、俺は無実の罪で捕まるけど、そうなったら妻は離婚。会社首。俺はもう飲んだくれですよ。で、何にもない平面で転んじゃって顔面をザーッ!」
大竹ワールドなネガティブ爆発!「ザーッ!」がもう文字だと伝わんないんだよねぇ。独特の言い回しで可笑しい。この「ザーッ!」が今後妄想に入る度に出てくる。
新宿で降りる3人組とカナ。ヒロミチはその後姿を見つめ「また会えるかなぁ」とつぶやく。


一方美術館。アンザイアキオ(内村光良)が絵を観ながらボソボソと独り言。『発展と衰退を繰り返す東京』*2の絵を観て「あのオレンジが足立区あたりか?これが世田谷?」と言ってるあたり、あまり絵には詳しく無さそう。
絵に近づきすぎてこの美術館の監視員であるユキに怒られるアキオ*3。さらにはくしゃみ*4をして絵にツバをつけ、それを拭こうとしてユキを慌てさせる始末。
アキオ「いやでも、ツバ的なものは掛って・・・ツバ的ってツバなんですけど」
と、言い訳にもならない言い訳を。ツバ的て。
ここで電話がかかり、取るとお見合いのお断り電話。どうやらお見合いの待ち合わせだった様子。
不幸と言うのは続くもの。途端に何故か泣き出すユキ。
他の監視員の声がしてまたもや言い訳にもならない言い訳を繰り返すアキオ。ウッチャンは次々と不幸を呼び込むダメ男を演じさせると旨いよなぁ。


所変わってアパートの一室。タケハラマモル(三村マサカズ)の部屋に訪ねてきたテッペイ。部屋はアイドルのポスターと写真だらけ。どうやらオタク気質の男らしい。
アイドルの写真に交じって歯医者のお姉さんやら、JALのCAさんやら、美術館のお姉さん(ユキですね)やらの写真も・・・オタク気質に加えてストーカー気質らしい。う〜ん危ない男。
しかしこう見えてマモルはテレビ局勤めらしい。どの役職についているのか聞くテッペイに「そういうのじゃねぇんだよな・・・テレビ全般?」と、言葉を濁す様子が嘘臭くててっきり無職なのをごまかして嘘ついてるのかと思ってた。これは騙された。まさかなぁ・・・。
テッペイの恋人カナの写真を撮らせてくれとねだるマモル。写真を撮るときはもちろんデカイ鞄にカメラを隠して・・・その姿は完全に変態。
テッペイが鞄を奪って投げつけるとそれがマモルの「大切ゾーン」に当たる。この「大切ゾーン」の言い方が面白かった。「大切ゾーン」の本がセットからはみ出しちゃうしグダグダ。
テッペイはどうもそんなマモルを心配しているらしい。生身の女の子と真剣に向き合って欲しいと。
例えば写真を撮った一般人の中から一人を選ぶとしたら誰かと聞くと、マモルはユキ(この時はもちろん名前を知りませんが)が一番のお気に入りらしい。
テッペイもどうやらユキに会ったことがある様子。ただ、どこで会ったかまでは覚えていなく、会ったかどうかまでうろ覚え。
ユキに一点集中することに決まると、ユキの写真をさらに写真に撮ろうとするマモル。「引いてんじゃねぇ!」とテッペイをはたくマモル。
そりゃ引くわ。しかし確かにM1行けそうな良いコンビだ。


その夜ヒロミチが家に帰るとホットヨガと料理教室に通うために化粧をするサオリ*5
服も新しく買ったものらしく、「似合うじゃん」と褒めると「褒めるなんてめずらしい」と返すサオリ。倦怠期にありがちなやりとり。
ここでもまたヒロミチ・ザ・ネガティブワールド突入。
ヒロミチ「奴は浮気してる!最近外見に気を使いやがってしょっちゅう外出てる!アレ絶対男と会ってんだ!
ロデオマシーンも買った、ホットヨガも行き出した、誰なんだ相手は!料理教室の誰かか?いや、それはカモフラージュだな。昔の会社の同僚か?」
こっからさらに変なワールド突入。
ヒロミチ「お菓子の会社の職人か?ナニソレナニソレ!
こけしの会社の両刀か?ナニソレナニソレ!」
ここもほんっと文字じゃ表現出来ない!大竹ワールドです。
さらには、探偵を雇う→ホテル入るとこの写真を撮る→男と共謀して殺害計画を練る→帰ってきたとこを狙ってクロロフォルムで寝かせる→顔面をのこぎりでザーッ!
と、次から次へと逆に良くここまで思いつくなというくらい、マイナスへマイナスへと思考が向かうのが面白い。


どこかのバーにてまたまた登場の3人組。今度はワインの蘊蓄を垂れ流し、実にふかわっぽい。モデルふかわなんじゃねぇ〜の?
ここで今まで背景を流していた背後のモニターに映し出された情報により、ジュンが熊本県球磨郡水上村出身、アスカが茨城県東茨城郡大洗町出身、ミサキが山形県東田川郡庄内出身であると判明。難し気なワインの蘊蓄を足れながら「このワインを扱ってる店は都内でもここで3件目だね」なんて言ってる後ろでそんな情報を流されるもんだから、もう、笑っちゃったよ。
他の人物の紹介とかも欲しかったかなー。このモニター要所要所で使ってはいるんだけど、それほど有効活用されているようにも思えなかったから。
3人組からちょっと離れた席では、カナとテッペイがデート中。
「ああいうのに限って地方出身なのよ」というカナの予想当たっちゃってます。どうやらカナは生粋の東京人らしい。
話はそこから前カノ・前カレの話へ。こんな話しないほーがいーよー。
実際、カナがテッペイの友人たちとも付き合ったことがあって、さらにはその友人たちともしっかり寝ちゃってたって事実まで判明しちゃった。
カナはいわゆる悪女ってヤツ?話してる間もしきりに携帯いじってるし、いかにも今も浮気してますって雰囲気出ちゃってる。


ここで、赤いスポットライトを浴び一人怒りに震え吠えるアキオ!客先に自分たちへの対応の不満をぶつける!・・・と、思いきや、すでに客先を後にした所らしく、ヒロミチと二人ベンチに座って休憩中。ヒロミチの「それさっき相手の前で言ってくださいよ」と突っ込みが入る。
でもここ、笑える落ちがついていたとは言え、カッコ良かった〜〜っっ!!この吠えるウッチャンのシーンだけでご飯3杯いけますな!!
ベンチに戻った後「いつかの練習ね」というウッチャン(というかアキオですが)はそれはそれで可愛かったし!私には語尾にハートマークが見えた。
隣に見えるは大手企業のビル。
ヒロミチ「アンザイさん、あそこで働きたいと思いますか?」
アキオ「思わない。」
ヒロミチ「俺も。」
という会話に、今の仕事に懸ける信念のようなものが窺い知れる。
二人は、ブルブルスレンダーキャンプというあの有名な何かと何かをまんま足したような謎の商品を売り込みに行っているらしく、そこで、実際に使ってみて効果があるところを実践しなければならない羽目になったらしい。
ヒロミチは「底意地の悪い奴だ」とあまり乗り気ではないが、アキオは「これで契約が取れるようならばんばんざい」と前向き。
アキオ「まあそう腐るな!信念持って突き進もうぜ!どんな災難が振りかかってこようが・・・」
と、良いこと言ってる途中でさっそくサッカーボールが後頭部直撃!
ここでもウッチャン実にいい動きで気を失う。さすがにウッチャンは動きで笑わすの旨いよなーとこんなところで実感。
ヒロミチ「ここはサッカー禁止だぞ!ゴム跳びにしときなさい!あとシャドーボクシングにしときなさい!」
よりによって選択肢がその二つ。何故。
別件があるというヒロミチと別れ、アキオはユキの下へ。
美術館での事件の後、アキオは警備の人から尋問のようなものまで受けさせられたらしい。つくづく不幸なキャラだ。
しかし、その災難のおかげで話題も出来たので、さっそくさっきのサッカーボールの話をするアキオ。
ユキ「そのサッカーボール、どのくらいの大きさだったんですか?」
ヒロミチ「ん?」
気を取り直して、台風の日に傘を追いかけて傘ごと川に飛び込みそのまま下流まで流された話をするヒロミチ。
ユキ「その傘は、何色でしたか?」
ヒロミチ「はい??」
このユキさん、どうやら天然キャラのよう。見当はずれな質問攻め。ここでつっこみが入らないので自分が突っ込みます。
注目するとこそこじゃね〜〜だろ!!大きさとか色とかいいよっっ!!!
あ〜すっきり。
美術館で泣き出したのは『発展と衰退を繰り返す東京』がどうやら元カノの好きだった絵らしく、思い出して泣き出したらしい。う〜〜〜ん・・・本人にとっちゃ深刻なんだろうけど、はた迷惑な話ではある。
ここでうっかり絵画トークとふっちゃったために適当に話を合わせるしかないアキオ。
ここの一連の
アキオ「モネもね。」
ユキ「いえ、モネモネではなく、モネです。」
のやり取りが面白かった。ユキの「モネモネ」の言い方がすごく可愛い。
ユキがアキオをこうしてここに呼び出したのは、美術館でのお詫びをしたかったらしい。
おお。電車男的展開。
しかしユキが持ってきたのはやたらでかい絵画。さすがハンブンコント。自分的にこの舞台で最もコントっぽかったシーン。
これだけでかい絵画って高ぇ〜だろ!とか、むしろ嫌がらせか!とか、ほんとにどうやって持ってきたんだ!とか、結局アキオはどうやって持って帰ったんだ!とかいろいろ疑問はあるけど、ま、コントだからここはね。


場面は渋谷*6へ移り、カナを追いかけてきてしまったヒロミチ。
やばいよヒロミチ!それ完璧ストーカーだから!妄想するまでは正常だけど、行動に移しちゃったら変態だから!
カナが最も劇中悪役であるかのように描かれているけど、ヒロミチも結構な非常識人です。
そこへ現れる3人組。この3人はメインの相関図から外れているため、その他の登場人物たちから注目されることはないけれど、むしろこの3人こそストーカーなんじゃないかと怪しまれそうな遭遇率の高さ。
これで3度目の遭遇となるカナはもっと怪しんでいいと思う。
しかし気付かれてしまうのはヒロミチの方。まぁ、実際に追いかけてきてしまったんだから弁解のしようも無い。被害妄想が半分現実化しちゃった。最初に声をかけとけばナンパの類として簡単に振られてそこで終わっていたかもしれないというのに、この被害妄想癖と後ろ向きさ加減が厄介な事件を引き起こしてる要因かもしれない。
問い詰められ、あわや警察沙汰と言うところで現れるテッペイ。
カナは先ほどから携帯で誰かと会話しており、待ち合わせをしている様子だったが、相手はテッペイだった。でもカナの「鈍臭いんだから〜」のセリフと、イラついた様子では、既に愛情は冷めていそうな気配。
テッペイはサオリの弟。偶然とは恐ろしい。
途端、何か面白いことを見つけたとでもいうような表情のカナ。
先ほどまでの態度とは一変し、道を尋ねられただけだとヒロミチを庇う。
ここで映画を観に来ようとしたと嘘をつき、でっち上げた映画の説明が「くまとねこが良い感じで暮らしてくみたいな」と、実に大竹らしいなぁと。


と、全員の相関関係が明らかになったところで続きの感想はまた次回。
長くなっちった。

*1:というとどうも表現が悪いな。下手に壮大でない、音の少ない感じがとても良い。

*2:この他『バルセロナの謝肉祭』『メジャーリーグの侍たち』これらの絵が本当にある絵なのか気になる。

*3:まだ内村光良著『アキオが走る』を読んでいない。

*4:見事なくしゃみでした。

*5:TSUTAYAから借りてきた『シンドラーのリスト』を観ずに返し、もう何回も借りてるけど「長いんじゃねぇかな」という恐怖で結局観てないというやりとりがあったけど、これはホントなのだろうか。大竹スピルバーグ好きなんだよね確か。

*6:この場面、またもやお見合いしふられるアキオ、何かを物色中のサオリ、ユキをカメラを持って追いかけるマモルと、軽く全員集合する。マモルとヒロミチのやりとりもあるので、さまぁ〜ずファンは必見。ヒロミチの「男か?アイツあんな表情するんだ」のセリフも、今から思えば感慨深い。